Skate Forward! その先へ Vol. 5 スピードスケート 男子短距離
村上 右磨 選手 / 新濱 立也 選手

日本男子復活を担う最速のアスリートたち

12月26~29日、長野市のエムウェーブで開催される全日本スピードスケート選手権大会。シーズン後半の主要国際大会の代表選考会となる重要な大会で、男子500mの頂点を競いあうのが、新濱立也選手と村上右磨選手。新濱選手は昨季世界スプリント総合2位の実力をもつ日本の若きエース。いっぽうの村上選手も、先日のワールドカップ(W杯)長野大会においてリンクレコードでW杯初優勝したばかり。女子に続け!と、復活を目指すスピードスケート日本男子をリードする二人に聞きました。

ナショナルチームでお互いに高めあって

―― いまナショナルチームで日々切磋琢磨しているお二人ですが、お互いの第一印象を教えてください。

村上 「本当に大きいな」というのが第一印象です。身長もあるし、体重もあるんですけれども、体脂肪率がめちゃくちゃ低い。新濱選手がナショナルチームに入って、初めて会ったのが昨年5月の測定の日だったので、その印象が強いです。オリンピックイヤーの後で、みんなそんなにコンディションがよくないなかで、彼だけが抜群にいい状態だったので、すごいと思いました。

新濱 村上選手は先輩であり、口数も少ないほうなので、正直最初は怖かったです。(笑)測定のときに少し話をしたんですけど、なにか内に秘めているものをもっている人だなと感じました。


―― それから1年半、印象は変わりましたか。お互いを短い言葉で表すとしたら。

村上 「力強いけど繊細」ですかね。パワーは誰よりもあると思うんですけど、意外と涙もろかったりもする。(笑)ブレードや靴も細かいところまでこだわっているし、力強いだけではなく繊細なんじゃないかと思います。

新濱 村上さんはもの静かなんですけど、勝負事にはすごく熱心というか、前向きです。ここぞというところをしっかり狙いにいく選手だなと感じます。

村上 去年からは全日本ではつねに二人とも表彰台に立っていて、W杯でもだいたい2回滑れば1回は二人で上がっています。表彰台の常連というか、二人とも強くなったなという気持ちです。


―― 新濱選手は昨年ナショナルチームに入って、どういうところが違うと感じましたか。

新濱 先にナショナルチームに入っていた大学の同期の佐藤綾乃選手から「ナショナルの練習はきつい」と聞いていて、「どんなことをやるんだろう?」という不安もあったんです。でも、自分は自転車が強いからかもしれないですけど、陸上トレーニングはそこまでつらいと感じなかった。実際には、想像していたよりも新しいトレーニングが多くて、「このトレーニングをしたらここにつながるんだ!」とか、発見が多かったと思います。


―― 村上選手は2016年からナショナルチーム入りしていますね。

村上 自分は本当に陸上トレーニングが弱いので、ナショナルチームに入って地獄を見ました。(笑)読書が趣味なんですけど、練習がきつすぎて、本を読むメンタルも体力も残っていなかった。最近になってようやく余裕ができて、本が読めるようになりました。ナショナルチームでは、ただ負荷をかけて練習をがんばるだけではなくて、リカバリー(回復)を考えた練習をしている。それが、いまのナショナルチームがいい成績を出している大きな要因の1つじゃないかなと思います。


ずっとスケートが好きだった

新濱 立也選手―― ところで、お二人とも北海道出身で、お兄さんがいて、3歳からスケートを始めたという共通点がありますね。

村上 ぼくは大樹町出身です。スポーツ少年団に入っていた兄について、3歳のときに滑りに行ったのが最初です。ちゃんと最初から滑れたらしいので、スケートのちょっとした才能はあったのかな。(笑)夏はサッカー、冬はスケートという感じで、習い事の1つとして続けていました。ずっと兄を追いかけて、追いつくのが楽しかったんだと思います。兄は高校生でやめてしまったんですけど、いまでも自分が気づかないようなポイントをアドバイスしてくれます。

新濱 ぼくは別海町出身です。記憶はないんですが、3歳から2歳上の兄について遊び感覚で滑っていたそうです。小学生のときに少年団に入って、競技としてスケートに取り組みはじめました。周りから他のスポーツも勧められたりしましたけど、遊びで陸上をやったくらいで、スケートが楽しかったので、ずっとスケートを選んでやっています。


―― いつ、トップ選手としてやっていけると思いましたか。

新濱 正直、思ったことは1回もないです。(笑)高校卒業後は実業団でスケートを続けるのが希望だったんですが、高校2年生のときの成績が全然よくなくて……。健大(高崎健康福祉大)に声をかけていただいて、スケートを続けることができました。ちょうど平昌オリンピックのシーズンだった大学3年生のとき、オリンピックを狙ってみようかなという意識になって、代表選考会で4位になれた。それがたぶん、今後日本代表として活躍したいと思った瞬間ですね。


―― 村上選手はこの間の長野大会で、27歳でのW杯初優勝。スピードスケート界では遅咲きだということですが。

村上 新濱選手や山田将矢選手とかが大学生のときからW杯に出て活躍しているように、世界的に見ても、ジュニアからシニアに上がったとたんに世界のトップで戦う選手も多い。自分は学生時代そんなにいい成績が出せていなかったので、何度もやめようと思っていました。でも、最後くらいがんばろうという気持ちで毎年毎年やってきたら、ナショナルチームに入れてもらえました。それからナショナルチームで必死にがんばって、いま4年目ですけれども、苦手な部分を克服して、得意な部分を伸ばしていったのが、今回の成績につながったのかなと思います。


―― 新濱選手のISU(国際スケート連盟)のバイオグラフィーには、尊敬する人は「父」と書いてありますね。

新濱 親父は漁師をしていて、仕事上、朝がすごく早いんですよ。それでも、仕事から帰ってくるとケロッとしていて、中学校まではスケートの練習場まで連れて行ってくれていました。いまもすごく応援してくれていて、尊敬しています。


―― 村上選手は、「清水宏保、長谷川翼、キエルド・ナウシュ」とあります。

村上 清水選手(長野五輪スピードスケート男子500m金メダル)はぼくの小学校時代のスターです。昔、札幌で大会があったときに見に行って、速くてかっこいいし、スケートを極めていると思いました。あのぐらいオーラの出る選手になりたい。いまも尊敬していますし、憧れです。長谷川選手は、自分のほうが一歳上なんですけど、自分の学生時代のチャンピオンで、ここ一発という舞台ではつねに優勝してくる選手です。勝負強さという点で彼の名を挙げました。もう1人、ナウシュ選手(オランダ)は、平昌オリンピックで1000mと1500mで2冠の選手です。ずっと強い選手ではあったんですが、バンクーバー、ソチの選考会ではよい成績を出せず、平昌が初出場でした。自分ももし北京オリンピックに出ることができたら、彼と似たような状況になるのかなと思う。1度のチャンスで2種目制覇するというのは並大抵のメンタルではないですし、何回もたぶんつらいこともあったと思うんです。そういうところから立ち上がって、つねに世界のトップにいるのが素晴らしいと思ったので挙げました。


北京オリンピックを目指して

村上 右磨選手―― スピードスケートをやっていてよかったと思う点は。

新濱 多くの人と関われていること。チームメイトやライバル、多くの選手とつながれて、巡り合えて、本当にいい環境で仲間たちと触れ合えるぶん、人間としても成長できている。上下関係はありますが、年上から年下までいろんな年齢層の人と関われているのが自分にとって、すごく大きいなと感じています。

村上 W杯で世界各地を回れるようになって、自分の視野が広がりました。国内でも、帯広から山梨、群馬に行って長野などいろんなところに行くスポーツなので、いろんな景色が見られるというのもスケートをしていて楽しいところです。


―― W杯で世界を転戦する際、遠征のストレスなど苦労はないですか。

新濱 転戦するのはストレスではないんですけど、長距離移動の飛行機がすごい苦痛です。日本にいると、どこでも眠れるんですけど、飛行機ではどうがんばっても2時間ぐらい。(笑)いまは苦労しています。

村上 自分は全体の7~8割ぐらいずっと眠っているので。


―― 機内で眠るコツはありますか。

村上 ただただ無心になって目を閉じていれば眠れます!(笑)


―― 今後の目標を教えてください。

村上 今シーズンは、全日本距離別選手権とW杯第1戦はよい成績が出せなかったんですけど、そこから自分のなかの課題を見つけて、それを修正して、W杯ポーランド大会と長野大会ではいい成績が出せました。自分のいいところと悪いところがわかって、よくなってきたと思うので、それに磨きをかけていけば、もっといい滑りができるんじゃないかなと思います。リンクレコードもまたさらに更新したいので、それに向けて準備していきます。

新濱 今シーズンに関しては、昨シーズン思うように成績が出せなかった世界距離別選手権でしっかり表彰台に上がるのが最低限の目標ですが、あくまでそこは通過点。最終的には、北京オリンピックで金メダルを目標にやっていければいいかなと思っています。


―― ありがとうございました。今後のさらなるご活躍を期待しています。


スペシャルインタビューイメージ

スピードスケート選手 (ナショナルチーム)
高堂建設所属
村上 右磨

1992年生まれ 北海道大樹町出身
2019/20 ワールドカップスピードスケート(長野) 500m(1) 優勝/(2) 3位
2019/20 ワールドカップスピードスケート(トマショフマゾウィエツキ) 500m 2位
2019 世界距離別スピードスケート選手権大会 500m 5位
2018/19 ワールドカップスピードスケート(ソルトレークシティー) 500m(1) 3位/500m(2) 3位

スペシャルインタビューイメージ02

スピードスケート選手 (ナショナルチーム)
高崎健康福祉大学所属
新濱 立也

1996年生まれ 北海道別海町出身
2019/20 ワールドカップスピードスケート(長野) 500m(1) 2位
2019/20 ワールドカップスピードスケート(トマショフマゾウィエツキ) 500m 優勝
2019 世界スプリントスピードスケート選手権大会 総合2位
2018/19 ワールドカップスピードスケート(苫小牧) 500m(1)(2) 優勝
2018 全日本スピードスケート距離別選手権大会 500m 優勝/1000m 3位

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