JSFパートナーインタビュー
株式会社ロッテ
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目標へ向けて努力するひたむきな姿にこそ感動がある
2006年から4期16年にわたりオフィシャルパートナー契約を締結している株式会社ロッテ。マーケティング本部の鈴木由美子さんに、スケートと事業内容との関わり、CM撮影の舞台裏、アスリートへの期待についてお話をうかがいました。
―― 株式会社ロッテ様には2006年より日本スケート連盟のオフィシャルパートナーとして長年ご支援をいただいています。
鈴木 弊社はかねてより社会貢献活動に積極的に取り組んでおり、プロ野球の球団をもつなど、会社としてスポーツを応援するカルチャーがあるなかで、さらにいろいろな視点からアスリートを応援していこうという考えに至り、2006年より日本スケート連盟さんとご一緒させていただくようになりました。そのご縁もあって、広告キャラクターとして代々スケーターの方々に弊社の広告にご登場いただいており、これまでに荒川静香さん、村主章枝さん、安藤美姫さん、浅田真央さん、本田真凜選手、そして現在は羽生結弦選手に継続して出演いただいています。
―― 数ある競技のなかから、協賛先としてスケートを選ばれた理由はどんなところにありますか。
鈴木 当時、弊社の商品に関係する研究の成果を通じて、お菓子やアイスには、もっとスポーツに対して貢献できる力がありそうだということがわかってきて、アスリートをより積極的にサポートできたらという考えが出てきました。ちょうど2006年前後は、華やかな氷上スポーツとしてフィギュアスケートが注目され、大きな話題になりました。それがきっかけとなり取り組みを始めたのですが、とてもよい機会をいただけたと思っています。
―― たとえばどのような研究をされているのですか?
鈴木 研究自体は創業以来行ってきたのですが、たとえば咀嚼が集中力を高めることといった研究の結果が次第に出てきました。こうした咀嚼の効果については、私たちは「噛むこと研究部」という組織を設けて、研究や情報発信を行っています。これは弊社の商品に限らず、「噛むこと」の可能性を広く見出していくアクションで、歯科医師や医療関係の方々とも共同研究を行うなど、咀嚼の研究に取り組んでいるものです。アスリートの方々にも、私たちが得てきた知見をうまく生かしていただけるような情報提供ができたらという願いがあります。
(噛むこと研究室 https://kamukoto.jp/ )
―― 噛むことの大切さが改めてクローズアップされているわけですね。
鈴木 羽生選手にご登場いただいたCM「噛むことの力、スポーツの力。GUM FOR THE GAME」もその一環だと考えています。研究は充実してきているのですが、情報発信や啓発活動をいかに広げていくかが私たちにとっての課題ですね。歯の健康に深くかかわる歯科医師や歯科衛生士の方々への情報提供などのサポートにも取り組んでいます。
―― ご支援を通じて、たくさんのスケーターと関わってこられましたが、スケーターにはどのような印象をもっていらっしゃいますか。
鈴木 CM制作においては、みなさんアスリートですので、フィギュアスケーターであることをベースに、無理をせず自然体で、かつ真摯に弊社商品をご紹介いただいていることをありがたく思っています。弊社も選手のみなさんを応援するとともに、協賛をしてきたことで、選手のみなさんにもロッテに対して親しみをもっていただいているようで、とてもうれしいです。いつも大会でお菓子を提供しているのですが、スケーターのみなさんに召し上がっていただけるといいなと思っています。
―― 大会での選手の様子を見ていますと、日本の選手はもちろん、海外の選手にもアーモンドチョコレートがとくに人気のようです。
鈴木 そうなんですね! アーモンドチョコレートが好きだとおっしゃるスポーツ選手は多いようです。スピードスケートやショートトラックの大会にもお菓子を提供していますが
コンマ数秒を争う競技を戦ううえで、少しでも選手のみなさんのお役に立てたらと願っています。
―― スケートの会場に実際に足を運ばれることもおありかと思いますが、生で見るスケートはいかがですか。
鈴木 氷を削る音に迫力があって圧倒されますね。フィギュアスケートはとくに美しさや華やかさが話題になりがちですが、実際に間近で試合を見ると、選手たちの体幹の強さや筋力が伝わってきて、これが競技なんだなという強い印象を受けます。大会の行われている時期は社内も盛り上がっています。お得意様からの関心も高く、スケートシーズンになると期待をもって見守っていただいています。
―― 鈴木さんご自身がとくに印象に残っている大会や出来事があったら、教えてください。
鈴木 やはり羽生選手の平昌でのオリンピック2連覇でしょうか。怪我でブランクがあり、連覇への期待がかかるなかで、ノーミスの素晴らしい演技で見事な成果を出された。そのプレッシャーに打ち克つ精神力に感動し、驚かされました。当たり前のことではないのに、当たり前のように金メダルを獲っていく、その努力はどれほどのものなのだろうと思わされましたね。それから、フィギュアスケートでいいなと思うのは、試合後にエキシビションがあるところですね。見る側としてはとても楽しみですし、全員で滑るシーンの演出なども、毎回楽しみにしています。
―― 羽生選手については、CM制作の舞台裏でも、これまでにさまざまなエピソードがあるのでは?
鈴木 そうですね。コンセプトや衣装はまず制作チームで考えるのですが、羽生選手ご自身も必ずチェックされます。弊社の広告はスケートリンクで滑る姿を捉えることも多く、試合さながらのジャンプを跳ぶ場面もありますから、動きやすさや映りについても確認して、撮影直前に手直しをすることもあります。撮影中も、スタッフはOKを出すんですけれども、ご本人が「いやもうちょっと」と、ご自身が納得いくまで何度でもやってくださる。キャンペーンの景品として、羽生選手のいろいろなポーズをかたどったフィギュアを制作したときは、試作品を見ながら、「そのポーズはこうしたほうが」とその場でポージングをしてくださったこともありました。”羽生選手らしさ”をご本人も大切にされているのでしょうし、私たちもその点はとても意識して広告制作に取り組んでいます。2020年に放映した動画についてもまずどういうストーリーを打ち出すかというところから、シンプルに、丁寧に作っていきました。何年もご一緒するなかで、羽生選手は制作スタッフに普通に話しかけてくださったり、顔を覚えてくださったりし、そのことにも感動してしまいます。こういうご縁をいただけたこと自体が奇跡のようなことだと思っていますし、今後もご縁が続くことを願っています。
―― 2020年はコロナ禍という状況のなか、選手にとっても多難なシーズンでした。
鈴木 選手にとって大切な試合が開催できなくなっていくことに対して、私たちも胸を痛めていました。アスリートはたとえ試合がなくなったとしても、いつでも本番に備えて準備をしていかなくてはなりませんよね。選手のみなさんは非常に苦しかったと思うのですが、それは一般の私たちにとっても同じような状況でもあり、共感できる部分がありました。そこで、いつ本番が来るかわからないなか、報われるだろうかと思いながらも努力を重ね、でもきっとそういう日が来るはず……という希望を伝えるようなメッセージ動画を、羽生選手にご登場いただき、2020年発信したんです。私たち生活者にとっても、「積み重ねた努力が無駄になることはないから、コロナ禍が明けるまでがんばろう」という前向きなメッセージを込めたプロジェクトでした。
―― コロナ禍にあっても、御社には日本スケート連盟のオフィシャルパートナーを継続していただいています。
鈴木 コロナ禍の苦境においても、アスリートは究極的に成果を出さなければならない。ものすごい精神力ですよね。苦しいなかでも、数が少なくなってしまった試合に全力で臨む姿、記録を更新する姿などを近くで見て、お話を聞かせていただくことによって、私たちもがんばろうと思うきっかけを受け取っています。連盟さんより選手のみなさんからのメッセージ動画をいただき、社内で共有させていただいたのですが、強く胸を打たれて、サポートを続けられることに喜びを感じているところです。スケートの選手のみなさんは、長い期間ずっと世界で上位を争うような位置を保ち続けていて、応援される生活者の方々も非常に多く、注目度が高い。アスリートのみなさんが成果を出すための努力を続けられる環境がずっとあること、大会が安全に開催されること、そこでみなさんが力を発揮できることを願い、私たちにできるサポートを続けていきたいと思っています。
―― 改めて、いまスポーツがもつ力、スポーツがもつ価値について、どのように考えておられますか。
鈴木 スポーツには純粋な感動があります。目標をはっきりと掲げて、そこへ向けて努力し続ける姿は本当に貴重なもの。がんばっている姿って、こんなに感動するんだ、ましてやそれによって素晴らしい成果が出ることがあれば、本当に奇跡だという思いです。目標へ向けて努力するひたむきな姿にこそ感動があり、スポーツがもつ魅力があるのだと感じています。
―― 日本スケート連盟は2029年に100周年を迎えるにあたり、より社会とつながり、医療や健康にも視野を広げて活動していきたいという目標を掲げています。
鈴木 私たちに応援できることがあればぜひご一緒したいですね。スピードスケートやショートトラックも含めて、競技の間口が広がり、選手たちが競技に集中できるような環境を作ることも連盟さんの仕事の一部でしょうし、みなさんの挑戦に対して、私たちも微力ながらも積極的なサポートをしていきたいと考えています。
―― 今後、スケート競技に期待することや、こうであってほしいと考えておられることはありますか?
鈴木 たとえば羽生選手でしたら誰もまだ実現していない4回転アクセルの完成、スピードスケートだったら日本記録や世界記録の更新といった成果に向けて、選手のみなさんは練習に励んでおられると思います。私たちも、みなさんがそれぞれの目標を達成できるようにと心から願い、期待を寄せています。