Skate Forward! その先へ
Vol. 6
フィギュアスケート 男子シングル 鍵山 優真 選手
フィギュアスケート 女子シングル 河辺 愛菜 選手
フィギュアスケート アイスダンス 吉田 唄菜/西山 真瑚 組
ユースオリンピック冬季競技大会(1月、ローザンヌ)
高まるオリンピックへの思い
15歳から18歳までの若きアスリートを対象とした国際総合競技大会「ユースオリンピック」。
1月にスイスのローザンヌで開催された第3回大会に、フィギュアスケートからは、男子シングル鍵山優真、女子シングル河辺愛菜、アイスダンスの吉田唄菜/西山真瑚組が参加した。鍵山が金メダルを獲得し、第1回大会(2012年)の宇野昌磨の銀メダル、第2回大会(2016年)の山本草太の金メダルに続き、日本男子が3大会連続でメダルを獲得。アイスダンスの吉田/西山組もNOC混合団体で金メダルを手にした。オリンピックの意義を実感し、それぞれ新たな目標を抱いて帰国した4人に聞いた。
―― 男子シングルの金メダル、NOC混合団体での銀メダル、おめでとうございます。大会を振り返っていかがですか。
鍵山 いま実際にメダルをかけていて、優勝したんだという実感がわきましたし、競技でも競技以外でもいろんな経験ができたので、ユースオリンピックに出られてよかったなと思います。
―― 大会にはどんな気持ちで臨みましたか。
鍵山 一生に一度しかない体験なので、優勝を狙っていたので、目標を達成できてよかったです。
―― これまでの大会と比べて感じたいちばんの違いは?
鍵山 ジュニアグランプリやファイナルは、フィギュアスケート競技だけの大会でしたけど、ユースオリンピックは冬季のスポーツの人たちが集まってくる。そこが大きな違いだと思います。あとは、ユースオリンピックならではのイベントがありました。
―― ユースオリンピックは、スポーツだけでなく、文化・教育プログラムも一体となったイベントです。印象に残ったプログラムは?
鍵山 「チャット・ウィズ・チャンピオン」でパトリック・チャンさんが話してくれたんですよ。試合やソーシャルメディアのこと、今の日本の技術のこととかたくさん話をしてくれて、行ってよかったなと思いました。
―― パトリック・チャンさんは鍵山選手の表現面も高く評価されていたそうですね。
鍵山 素直にうれしかったですし、ちょっとは成長できたのかなと実感できました。
―― 選手時代のパトリック・チャンさんはどういう印象でしたか。
鍵山 とにかくスケーティングがうまいという印象です。自分も滑りとかをお手本にしているので、あれぐらい滑れたらいいなと思います。滑っているだけで、スケートを楽しんでいるのが伝わってくるので、自分もそういうふうになりたいなと思っています。
―― パトリック・チャンさんは、「オリンピックは普通の試合よりもみんなが注目するし、周囲が騒がしくなる。プレッシャーがすごく大きいから、オリンピックの前に、ユースオリンピックという経験ができるのは貴重なことだ」と言っていました。鍵山さんは緊張するタイプですか。
鍵山 緊張はけっこうするほうです。今シーズンは1回だけ緊張に負けてしまった瞬間がありました。ジュニアグランプリファイナルのときなんですけど。全日本ジュニアが終わって、みんなが期待してくれていて、自分もがんばらなきゃと思っていたんですけど、プレッシャーや、自分の緊張に負けてしまって、表彰台を逃してしまった。でもその失敗があったから、反省とか課題を見つけることができた。全日本選手権もこのユースオリンピックも、いい感じで終わることができたんです。やっぱり経験ですね。
―― ジュニアグランプリファイナルの経験から気づいたことがあったのですか。
鍵山 ジュニアグランプリファイナルは会場も大きくて、観客もたくさん入っていた。会場の雰囲気にのみ込まれてしまったので、全日本はのみ込まれずにがんばろうと思ってやりました。
―― ユースオリンピックの選手村を経験してみて、いかがでしたか?
鍵山 選手村の生活はすごくよかったです。歩いているだけで、ほかのいろんな競技の人とか外国の人とすれ違ったりして、あいさつするのもとても楽しい。向こうからいっしょに何かやらない?と誘ってくれて、カードゲームとかエアホッケーをやったり。ぼくは自分からあまり積極的にいかないタイプなので、誘ってくれてうれしかったですし、いっしょに遊んですごく仲良くなれた。個人的には交流も楽しかったのでよかったです。
―― ここは変えなくてはいけないと思ったことは?
鍵山 本当にもっと英語を勉強しなければいけないなと思いました。今回は西山真瑚くんが通訳してくれたので、なんとかなったんですけど、1人だったらどうなっていたのかわからないので。英語を理解できるようにもっともっと勉強したいです。
―― 次の試合は四大陸選手権(2月6~9日/韓国)。シニアの国際大会は初めてですね。
鍵山 シニアとなると、本当にトップの人たちが集まってきます。まだ戦ったことがないのでわからないんですけど、四大陸選手権に実際に出て戦って、自分がどういう立ち位置にいるのかを確認していきたいなと思います。
―― さらに世界ジュニア選手権(3月4~8日/エストニア)も控えています。
鍵山 今回のメンバーのなかに、世界ジュニアに出る選手たちがいたので、実際その選手たちにいま勝って、表彰台の可能性も見えてきましたけど、他の選手たちはもっとがんばってくると思うので、自分も負けないようにもっともっと練習して、世界ジュニアで優勝したいです。
―― ユースオリンピックを経験して、あらためて、将来のオリンピックを想像しましたか。
鍵山 この大会を通して、オリンピックに出たいという思いはさらに強くなりましたし、狙うとしたら北京オリンピックから狙っていきたいなと思っています。
―― 首にかけている2つのメダルを今後にどう生かしますか。
鍵山 ユースではあるんですけど、オリンピックマークのついた大会で個人戦と団体戦で(メダルを)とれたのをすごくうれしく思っていますし、次はオリンピックでメダルをとりたいという気持ちが強くなったので、もっともっとがんばりたいと思います。
―― お父様(鍵山正和コーチ)に金メダルの報告は?
鍵山 終わってから連絡して、よくがんばったなと言われました。
―― (オリンピック出場経験のある)お父様からオリンピックのことを聞いたことは?
鍵山 あまりないです。きっと聞いたらさらに行きたいという気持ちが高まると思うので、聞いてみて、また練習をがんばっていこうと思います。
―― 大会を振り返って、いかがでしたか。
河辺 大きな試合でまず(トリプル)アクセルを跳べたことはすごい自信につながったし、反省点もいろいろ見つかったので、今後はそこを直していきたいなと思います。
―― 改善したい点と今回の収穫を教えてください。
河辺 ショートがノーミスでできたことは今回の収穫になったと思うんですけど、フリーではアクセルのあと、ミスをしてしまったので、そこを直していけたらと思います。
―― そのなかでも自己ベストを更新しましたね。
河辺 ショートはよかったし、フリーはミスがあっても自己ベストを出せたのはうれしいけど、もっと点数が出せたと思うので、次の試合ではジャンプでミスをせず自己ベストを出したいです。
―― ユースオリンピックの雰囲気はいかがでしたか。さまざまなプログラムがありましたが、印象的だったものは?
河辺 いつもはフィギュアの人たちだけですけど、他の競技の方たちと交流もいっぱいできたし、いい経験になりました。アスリートチェックのような感じで、いろいろ調べてもらえて、私は上半身が弱いことがわかったので、そこを直していったらいいとわかったので、よかったなと思います。
―― 今回の日本チームのメンバーはいかがでしたか?
河辺 (吉田)唄菜ちゃんたちとは、(ジュニアグランプリシリーズの)アメリカ大会で一緒になって、友だちだったので楽しかったし、(鍵山)優真くんとはしゃべったことがなかったんですけど、今回仲良くなれてよかったです。
―― 初出場となる世界ジュニア選手権が楽しみですね。
河辺 今回よりもちゃんといい結果を出したいので、楽しみではありますが、まず練習をがんばります。ショートは今回のような演技をして、フリーではノーミスでできたらいいなと思います。
―― 将来の目標に向けて、今回の経験をどう生かしたいですか。
河辺 この大会はいつもと雰囲気が違って、すごく緊張したんですけど、そこでちゃんとミスなくできるように、今回の大会を生かしてがんばりたいなと思います。
―― NOC混合団体の金メダル、おめでとうございます。ユースオリンピックに参加して、感じたことは?
吉田 いつもはスケートだけですけど、いろんな種目の方たちと一緒で、選手村の雰囲気がよくて、とにかくいつもと違いました。楽しかったです。
西山 観客のリアクションも違いました。大会というより、コンサートではないですけど、もっと盛り上がるというか、お祭りのような雰囲気で、戦っている選手たちも楽しんで滑ることのできる雰囲気でした。
―― 表彰台にのったときの気持ちはいかがでしたか。
吉田 まさか金メダルがとれるとは思っていなかったので、あまりまだ実感はないんですけど、すごくうれしかったです。
西山 言葉で言い表せないくらいのうれしさがあるんだなと感じました。本当にうれしかったです。
―― NOC混合団体は自己ベストを更新し、得点もトップ。個人戦からの躍進の要因は?
吉田 個人戦のときは(表彰台にのれず)悔しかったので、団体戦では自分たちの納得のいく演技がしたいと思って、自分たちがいまできることを思いっ切り全力で出したので、できたんだと思います。
西山 後悔なくローザンヌから帰りたいなと思っていたので、とにかくいま自分たちのできることを最大限に発揮したいなと思い、団体戦で演技したら、それがかたちになったのかなと思います。
―― ユースオリンピックの団体戦は、異なる国の選手がチームを組むという、ユニークな混合チームによる団体戦ですが、面白かったところは?
西山 これまで話す機会がなかった選手と話す機会があったり、キス&クライで点数を待っているときとか、いっしょに応援しているときに、いつのまにかチームとして団結している感じがあって、そこが団体だなという感じでした。
―― ユースオリンピックはどんな舞台でしたか。
吉田 とにかく大会名でいつもより緊張しました。選手村の雰囲気もよくて。私の目標にしているオリンピックは遠いので、あまり想像はできていないのですが、ユースですが、オリンピックの雰囲気はしっかり味わえたかなと思います。
西山 いままで経験してきた試合とは、まったく観客も試合の雰囲気も違っていたのですが、緊張もあったんですけど、いままで体感したことのないわくわく感も感じることができました。今回ユースではありますが、オリンピックを経験したことで、将来オリンピックに出場したいなとより強く思うようになりました。
―― ローザンヌのオリンピック博物館には行きましたか?
吉田 本番の前に行ったんですけど、今大会の金メダルも飾ってあって、「これとりたいなー」と思っていたんですが、(実際に)とることができてよかったです。
―― さきほど、鍵山選手が西山選手に英語でのコミュニケーションを助けてもらっていたと話していましたが、英語上達へのアドバイスはありますか。
西山 ぼくはたまたまトロントを拠点にして練習しているので、生活しているうちに、まだぜんぜん完璧ではないですけど、友だちやいろんな人と話しているうちに、ボキャブラリーが増えて、通じるようになりました。勇気をもって話しかけたら、意外とみんなやさしいよ、みんな聞いてくれるよ、と言いたいです。
―― これからの目標をお願いします。
吉田 世界ジュニアで今回よりもっといい演技ができるように、もっともっと練習をがんばって、後悔のない演技ができるようにがんばりたいです。
西山 大きな目標としては、しっかり日本のぼくたちのレベルが世界のアイスダンスのトップレベルに追いつけるように練習して、トップアイスダンサーになれたらなと思っています。
―― 世界ジュニア選手権での順位の目標は?
西山 具体的な順位としては、10位以内と掲げてもいいのかなと最近思えるようになってきたので、しっかりそこを目指しながらも、自分たちの演技をしっかり届けられるようにしたいなと思っています。
―― 今年から髙橋大輔選手がアイスダンスに転向し、アイスダンスがもっと注目されそうですね。
吉田 髙橋選手が始めてくださって、アイスダンスを知ってくださる方も増えたと思うので、自分たちもその波にのって、私たちのことも知ってもらえるようにがんばっていきたいと思います。
西山 シングル男子をここまで人気にしたのは髙橋選手が先駆者だと思いますし、アイスダンスを髙橋選手がもっと人気にしてくれるといいなあ、それについていけたらと思っています。
フィギュアスケート選手 (男子シングル)
星槎国際高等学校横浜所属
鍵山 優真
2003年生まれ 神奈川県出身
2020 第3回冬季ユースオリンピック(ローザンヌ)男子シングル優勝 NOC混合団体2位
2019 第88回全日本フィギュアスケート選手権大会(東京都)3位
2019/20 ISUジュニアグランプリファイナル(トリノ) 4位
2019 JOCジュニアオリンピックカップ大会 第88回全日本ジュニア選手権大会 優勝
フィギュアスケート選手 (女子シングル)
関西大学KFSC所属
河辺 愛菜
2004年生まれ 愛知県出身
2020 第3回冬季ユースオリンピック(ローザンヌ)女子シングル4位
2019 第88回全日本フィギュアスケート選手権大会(東京都)13位
2019 JOCジュニアオリンピックカップ大会 第88回全日本ジュニア選手権大会 優勝
フィギュアスケート選手(アイスダンス)
岡山SC所属
吉田 唄菜
2003年生まれ 岡山県出身
目黒日本大学高等学校所属
西山 真瑚
2002年生まれ 東京都出身
2020 第3回冬季ユースオリンピック(ローザンヌ)アイスダンス6位 NOC混合団体優勝