Skate Forward! その先へ Vol. 8 スピードスケートナショナルチーム
ヨハン デ・ヴィット ヘッドコーチ

Now They Believe That They Can Win
選手たちがつかんだ勝利への自信

メダル獲得が叶わなかった2014年ソチオリンピックの後、スピードスケート部門が新たに組織したナショナルチーム。2015年にそのヘッドコーチとして招聘されたのが、スケート大国オランダの新進気鋭の指導者ヨハン デ・ヴィットだった。2018年平昌オリンピックでの日本チーム躍進の立役者に、次のチャレンジについて聞きました。

オリンピックは魔法のようだった

ヨハン デ・ヴィット01―― 平昌オリンピックを振り返って、日本チームの成功についてどう思われますか。ヘッドコーチとしてご自身が成し遂げたものについてはいかがですか。

「平昌オリンピックを振り返ってみると、とても特別な思いがあります。私はコーチとしてのキャリアの中で、それまでオリンピックのメダルがとれたことはありませんでした。ですから、私が直接かかわったナショナルチーム所属の選手が2つの金メダル、そして銀メダルと銅メダルを獲得できたのは、非常に特別なことでした。チームパシュートのメンバーたちも個人種目でも健闘しましたし、小田卓朗は1000mと1500mで5位になるなど、たくさんの入賞者(8位以内)が出ました。オリンピック全体が私にとって、魔法のような出来事に感じられました」


―― 日本チームのヘッドコーチを引き受けたとき、まず何から始めたのでしょうか。何をしたいと思われたのですか。

「まず、選手たちの名前を覚えることからでしたね。(笑)というのも、私が知っていたのは、ワールドカップで活躍している数名の選手だけだったからです。日本選手は、ほとんどがBグループで滑っていたので、私にとって、なじみがありませんでした。日本スケート連盟から名簿を渡されたとき、本当に80%は知らない名前だったのです。ですが、選手たちの自己ベストタイムと結果を見てみたら、おや、悪くないぞと思いました。そして私は自分の滑りに関する理論に従って、オランダでトレーニングしていた頃のように指導を始めました。そのうえで、どうやったらよりよくなるか、どうやって試していこうかといくつかのアイディアを発展させていきました。多岐にわたる改善に取り組んだのですが、日本スケート連盟は私にすべてを任せてくれました。それが素晴らしかった。そうして、5年間で驚くべき進歩を遂げることができたのです」


―― いままで日本の選手と仕事をしてきたなかで、困難にぶつかったことはありましたか。

「大きな問題を抱えたことは一度もありません。私のほうも日本語を話せないし、中には英語があまり得意でない選手もいるので、言語の面でときどき難しい場合はありますが、本当の困難を抱えたことはないんです」


―― 5年前と現在とで、選手たちに大きな違いがあるとしたら何ですか。

「選手たちは今では自分が勝てると信じています。5年前の彼らはBグループで滑る無名のスケーターでした。Aグループにどうやったら上がれるのかがわかっていませんでした。Aグループというのは、トップ20であるいうことを意味します。選手たちはいまや上位20位に入っていて、世界最高になることも可能だという考えをもって、滑っているのです。そこが大きな大きな成果です」

最善を尽くせば、最善の結果になりうる

ヨハン デ・ヴィット02―― これからさらに強いチームを作らなければいけないわけですが、コーチとして、プレッシャーとはどう対峙しているのでしょうか。

「それはたやすいことではないですが、私がやろうとしているのは、自分の世界にギュッと集中して、周りの人たちが言うことを気にしないということです。私には自分の理念があるし、我々が一緒に取り組んでいる練習方法を信じています。各人が最善のことをやっていれば、全体として、できうる最善の結果につながると思う。信念を持って、そのように努めれば、プレッシャーも大丈夫です」


―― 2022年の北京オリンピックでは、日本チームはどんなふうになっているでしょうか。

「いい質問ですね。わかりません。(笑)選手たちとともに、このまま続けていけるように願っています。オリンピックの前に現役を引退する強い選手がいるかもしれません。そうなったら大変ですが、私たちはオリンピックで再びベストを尽くせるように、向上すべくトライするだけです。もちろん簡単ではありません。他の国々の選手たちもどんどん強くなってくるでしょうから。


―― ロシア、カナダ、イタリア、もちろんオランダも。

「いまカナダが迫ってきています。おそらく2年のうちに私たちより強くなるかもしれないし、私たちがさらによくなっているかもしれない。私たちはまだまだ強くなるし、もっと勝てる。ゴールに向かって、進み続ければ、オリンピックでさらなる勝利のチャンスが生まれると思っています」


ヨハン デ・ヴィット03―― 北京のオリンピックに向けての目標は?

「男子でメダルを獲得したい。それが最大のチャレンジです。もちろん女子ではメダルを引き続き獲り続けたいと思っています。髙木美帆はやはり世界でもっとも優れたスケーターの1人ですからね。いっぽう男子では、短距離やチームパシュートで世界のベストタイムに本当に近づいてきています。ワールドカップ長野大会では、長距離の5000mで土屋良輔が5位になりました。彼らが20年後に、彼らの子どもたちに、「見てごらん、パパはオリンピックメダルをもっているんだよ」と言えるようになること、それが私の大きなチャレンジです」


―― ところで、ヨハンさんはスピードスケートのどんなところがお好きですか。

「この質問は何度となく自分自身に問いかけてきました。不思議に聞こえるかもしれませんが、おそらく私はスピードスケートそのものが好きなんだと思います。私がいちばん好きなのは、スケーターたちと一緒に練習に取り組み、彼らが成長するように、より速く滑れるように、自分自身を信じられるようにすることなんです。それこそが、つまりはスピードスケートなんです。」


―― 最後に、ヨハンさんはオフの時間は何をされていますか。

「自分自身のトレーニングを少しずつでも続けるようにしています。そしてもちろん、家族で公園に遊びに行ったりもしています。帯広にはとても素敵な公園があるんです。妻と息子と出かけて、リラックスしますよ。」


スペシャルインタビューイメージ

スピードスケートナショナルチーム ヘッドコーチ
ヨハン デ・ヴィット

1979年生まれ
オランダ アルクマール出身
2007-2014 APPM、1nP、Project 2018(いずれもオランダ) スピードスケートチーム ヘッドコーチ
2014 ソチオリンピックオランダ代表コーチ
2014-2015 New Balance スピードスケートチーム(オランダ) ヘッドコーチ
2015-2018 日本スケート連盟スピードスケートナショナルオールラウンドチーム ヘッドコーチ
2018-現在 日本スケート連盟スピードスケートナショナルチーム ヘッドコーチ


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